終戦直前に生まれた南さんも、大きな意味での団塊隣接世代。リタイアが始まった団塊世代に、鹿児島市民として何を期待するかを尋ねてみた。
「団塊世代は、今まである意味ではみんな組織の中で自分の様々な思いを仕舞い込んで生きて来たのだと思います。今後は、いったん会社などかつての組織の枠を外れて、団塊世代個人が、人間としてどう生きるのかが本当に問われているのだと思います。団塊世代がこれまで培った経験を生かすと同時に、これからいかに次の社会のための個人の勉強をしていくかが大事かと思います。次の新しい個人の人生のために、組織一辺倒でその蓄えがなかった人は、リタイアしたこれから生涯現役として、個人の楽しい人生の蓄えを始めるべきだと思います」
一般的に団塊世代は、自らの思いはともかく、家族や自らを養うために会社なり組織のカラーに自らを合わせて、前半の人生を生きて来ざるを得なかったのだが、これからは「長い間仕舞い込んできた本当の自分の楽しみや生きがいはどれなんだということを、見つけ出す作業が必要だ」と語る、南さん。
「リタイア後、事業を始める人、地域の愛護会に参加する人、ボランティア活動に打ち込む人、団塊世代も様々ですが、現役時代とは違った、本当の自分を見出せる場所で、人間として打ち込める場所、そのときそのときで、人のために楽しく活躍できる自分の場を探し求めることが大事だと思います。そうした自らが心底打ち込める場が、今後いくつ出てきても、いいのではないかと思っています」
結局は、新しい生きがいとは「新しい人々との繋がりを形成することだ」と語る南さん。かつての会社・組織の人間関係から、自ら個人を中心とした新しい人間関係を作っていくこと自体が「生きがい」のコア部分なのだ。
「大きな意味での団塊世代の私たちにあるのは、経験と知恵とある程度の理性で、若い人みたいに、肉体的にも余り無茶は出来ませんが、精神的なパワーをどれだけ持てるのかが、今後、重要な意味を持ってくると思います。時間がたっぷりとあるので、明るく楽しい精神的なパワーがあれば、何でもやれることになります」
4年前から南さんは、団塊世代を中心とした、登山を始めた。平均年齢50歳を超える集まりで、鹿児島県内の山々をほとんど踏破していると語る。
「山登りの目的は、同じ頂上を目指すというみんなの目的が1つとなり、途中に助け合いがあり、頂上までみんなで登ったときの達成感は、これまた素晴らしいものがあります。大きな連帯感が生まれると同時に、個人個人としては、本当にやれた、次もまたやれるという、精神的な大きな自信と楽しみに繋がっていきます」
これまでの経験は、一応、大事に自分の蔵にしまっておいて、これからは好きなことが何でもやれるんだということで、本当に自分がやりたい、いろんなことにどんどんチャレンジしてほしい、と語る南さん。 「とにかく、何でも早く見つけて行動、実行することが先決です。『とにかく、やろう!』で、行動してから、いろいろ考え、軌道修正もする。これが団塊世代にとって、一番大事だと思います。病気でなければ、皆生涯現役。今後30~40年もありますから、生涯現役であれば、本当に無茶なこと以外は、何を始めてもいいのではないでしょうか」
「私がやってきた今までの経験は、参考でしかない。それはすでに終ったこと。次の新しい目標があれば、それに向かって挑めば、また新しい知恵が湧き出て来るものです。そのとき、そのときの目標を持つことが大事です」と語る南さん。
「私は今、鹿児島の青果業界を何とかしようという目標を持ち、青果業界の先にある小売業界を中心とした鹿児島市全体の活性化を射程に入れています。鹿児島は多くの観光資源や歴史的財産を持っていますが、それを本当に生かしきれてはおりません。それこそ、『鹿児島を支えている圧倒的多数の小売業が主体となる21世紀鹿児島の維新、つまり鹿児島が本当に地鳴りを起こして動くほどの、今後100年経っても全国、世界の人々が鹿児島を訪れてくれるほどのイベント、鹿児島の中心街天文館全体から共に仕掛け、鹿児島全体が支えるビッグイベントの創出』を自らの新しい生きがいと、目標にしています」
リタイアが始まった団塊世代は、時間もボランティア精神もたっぷり有り、これから本当に期待できる、と語る南さん。
「多くの団塊世代が、例えば西郷祭りや大久保祭りなどを中心に据えたようなビッグプロジェクトを支える一員として、鹿児島維新のビッグイベント内で楽しみつつ生計を立て、イベント内の持ち場、役割を3年、5年、10年と果たしていく。最初のプロジェクトを達成出来たら、さらに、次なるビッグイベント・プロジェクトに転戦して、その都度、団塊世代がセカンドライフとしてのそれぞれの生きがいを楽しみ、達成していくなんてことができるような、鹿児島全体が真底動く、本物の仕掛をしてみたいですね」
中心市街地を無視した都市再開発、すでに街にあり無形資産として存在するものや、永年培われた文化遺産などを本当に生かせない地域再開発は必ず失敗すると説く、南さん。
街興しのプロ・南さんが熱く語る、新しい、でっかい夢と目標は、まだまだ始まったばかりだが、「泣こよか、ひっ飛べ!」の薩摩隼人の行動力と、次なる生きがい探しに入った多くの団塊世代の、楽しくも命懸けの本物のサポートが、「21世紀鹿児島維新ビッグイベント」を大きく推進してくれるはずであり、南さんの今後の活躍に大いに注目したい。 (南虎)