主張・コラム 「団塊の主張」

高山市国府町の高齢者の皆さんから請われ、寸暇を惜しんで草刈に励む芸術家・弓削さん

団塊世代に課せられた大きな課題

 今、まさに団塊世代の残り少ない親たちが語り継ぐ、あの悲惨な戦争を思わせるほどの、惨たらしい大災害がアジアの各地で起きている。
  個人で抗うには巨大過ぎる戦争の悲惨さに勝るとも劣らない、突発で起きる自然の大災害に対して、人間は本当に無力なのだろうか。

まずは、最近起きたアジアの大災害、ミャンマーの13万人を超す人々の命を奪ったサイクロン大災害で苦しんでおられる大勢の被災者、また、中国四川省大地震の被災者4550万人以上の方々に心からのお見舞いを申し上げ、二つの想像を絶するアジアの大災害で無念にも亡くなられた数十万人の方々に、哀悼の意を表し、心からのご冥福を祈りたい。

まさに戦争の破壊力をも思い出させるような大災害に遭遇しているアジアの人々だが、戦争体験者としての団塊世代の親たちと言えば、お元気な方々で、もう90歳前後になられると思われる。

戦争で悲惨な体験を余儀なくされた団塊世代の親たちがその子達に、今も語気を強くして語る言葉に、「オレの目の玉の黒いうちは、二度と、絶対に、戦争はさせない!」という自らの決意とも覚悟とも思える言葉がある。

凄惨かつ悲惨な血みどろの戦争を体験し、全てを失った戦後の廃墟の中で、途方に暮れながらも、未来への一縷の望みを託して、生み育ててくれた、我々団塊世代や若い世代への、まさにこれこそが親たちの本心からの決意と遺言なのだ。

多くの団塊世代の親たちの「二度と、絶対に、戦争はさせない!」の決意の奥底には、「人間の知恵を尽くせば、戦争は絶対に回避できる!」「戦争をするくらいなら、死ぬほどの知恵を尽くせ!」の強烈なメッセージがかくされているのではなかろうか。

翻って今、まさに団塊世代の残り少ない親たちが語り継ぐ、あの悲惨な戦争を思わせるほどの、惨たらしい大災害がアジアの各地で起きている。

団塊世代の親たちの願いを思えば、個人で抗うには巨大過ぎる戦争の悲惨さに勝るとも劣らない、突発で起きる自然の大災害に対して、人間は本当に無力なのだろうか。 「人間の知恵を尽くせば、戦争は絶対に回避できる!」の確信と同じように、「人間の知恵を尽くせば、大災害は絶対に回避できる!」の確信を持つことは無理なのだろうか。

人間の「知恵」つまり、人間の「科学」、具体的には「計測し、予測する科学」を駆使し、自然の大災害を予測し、速やかに回避することが可能になれば、数千万単位の人々を被災予測地から、国家の命をして、事前に速やかに移動させることもでき、尊い人類や国民の命を守ることができる。

今回の四川大地震の断層の活動は、専門家も活動が止まったと考えていた想定外の突発的な大地震のようで、素人考えで甚だ恐縮だが、これだけ、パソコンやケータイなどを駆使したインターネットの情報網が発達してくると、精確な予測情報の把握の研究も思ったよりも著しい進化を遂げているのではないかと思われ、例えば非破壊検査などのような手法を用いた国家的手段で、大規模自然災害の兆候を事前にキャッチすることも可能なのではあるまいか。

現に、自然界の動物たちが、大規模地震の前兆の断層の電磁波などを感じ取り、事前に集団で特異行動や大移動のアクションを起こすことは周知のことであり、最近では、東京大学地震研究所や防災科学技術研究所の研究グループが、市街地の建造物が地震で受ける被害を予測する技術「コンピュータ振動台」を開発し、早ければ年内にも中国地震局との共同研究を始めるとのこと。

定年を迎え始めた世界のベビーブーマーや団塊世代が、余裕のある時間を、国や世界中に網羅した大規模自然災害の兆候を事前にキャッチする情報システムの端末稼動などに従事できるようにし、国家の命をもって、その役割を果たせるような仕組みや、大規模大災害予防システムなどを構築できないものだろうか。

そのために、世界の人々が愛用している各種情報機器をネットで繋ぎ、大規模災害被災の事前計測、予測、回避のために、ボランティア的に活用できる制度は構築できないものなのだろうか。

さらにまた、戦争を体験した親たちの遺言をしっかりと守り、後世に伝えながら、「悲惨な戦争の芽を大衆の知恵で撤去」しながらも、一方、「大規模災害予測科学のための民間ボランテイアに積極志願」できるような制度を確立することで、大規模自然災害などの兆候を動物たちよりも先立って、人類として事前にキャッチすることができればと、ふと思う。

リタイア後は、団塊世代や中高年世代が、国民のために予測科学情報を収集する仕事などに、ボランティア的に従事できるようにし、わずかな生計費を対価として得ながらでも、国家的、地球規模的大災害にしっかり対処していく方法もあるのではなかろうか。

大規模地震そのものを起こさせないようにするには、それこそ宇宙を司る全知全能の神の力を借りるほかはないかと思われるが、衛星写真などをはじめ、Googleアースなどの活用で地球全体を俯瞰できる時代が到来しており、大規模地震やサイクロン、超大型台風発生の精確な予測や、自然や社会インフラ破壊のシミュレーションを迅速に視覚化し、その対象地域から一時的に大衆を避難させることは、人類の計測し、予測する科学をもってすれば、国家的かつ、地球規模レベルでの対処ができるような気がしてならない。

40年も前のことではあるが、団塊世代は社会制度のおかしさに、ゲバ棒を振るって制度変革への闘いを挑もうとした気骨のある世代でもある。

還暦を迎えるに当たって、「止めてくれるな、おっかさん。背中の日の丸が泣いている!」と、悲惨な戦争を体験した自らの親たちの遺言をしっかりと守りながらも、もう一度、ゲバ棒ならぬ「60年間、鍛え、培った筋金入りの知恵」をもって、大衆のお役に立つべき時代が到来していることを、誰よりも、団塊世代自身が自覚していることと、信じて止まない。

今回のアジアの二つの地域の大規模災害からの一刻も早い復興に、全力を上げて挑み、命がけで尽力している世界の勇敢な人々に、心からの敬意を表したい。

改めて、今回のミャンマー、中国四川省の大災害の被災者の方々に、心からのお見舞いを申し上げるとともに、悔しくも亡くなられた数十万人の方々とご遺族に、心からのお悔やみの言葉と、衷心からのご冥福をお祈り申し上げたい。合掌!(南虎)



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