自費出版

「父子共作 半自伝 波瀾万丈90年
二度と戦争はせんど! 」

波瀾万丈90年 二度と戦争はせんど! 父子共作 半自伝 波瀾万丈90年
二度と戦争はせんど!

萩原勝義 著 補筆・構成 萩原彰一

刊行予定(ネット販売)

2009年8月15日(土)終戦記念日 刊行予定

2009年8月12日(水)からの配本開始を予定いたしております。

初版限定発売部数 300部

定価2,625円(本体価格2500円+税125円)

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抄録<廃墟で拾い集めた鉄くずで鍬作り>

勝ちゃんが75歳時にワープロで綴った『戦斗録』。

昭和天皇の終戦詔書「玉音放送」直後、一時は徹底抗戦を構えた厚木基地の若い隊員たちの心底からの説得と、宮崎及び桜島と地続きの垂水で、最後の解散式を終えた勝ちゃんは、鹿児島市の冷水町の実家に、やっと辿り着いた。

しかし、終戦直前の昭和20(1945)年、鹿児島市は合わせて8回の空襲に遭い、3300人余りの犠牲者を出していた。

 激戦の兵と言えども、焼け野が原となった鹿児島市内で、すぐに捜せる職など、皆無に等しかった。

自らの戦歴の激しさで、人々からはかえって恐れられ、職につくことも難しかった。
勝ちゃんは、何をやるとの仕事のあても無く、兵役を終えた次兄が帰りつくのを、実家でじっと待っていた。

「勝、今帰ったぞ! お前は、いま何を、しちょっとか!」

「何も、しちょらん。安則兄が帰ってくれば、いっしょき、何でん、出来っかもと思うて、待っちょったと!」

「安雄兄んさぁは、帰って来やったとか?」

「うんにゃ。安雄兄んさぁは、いま屋久島に居いやっどん、帰りの船が全く無くて、帰れずにおいやっと!」

「そうか。そいなら、ないかせんと、みんな飯が食えんど! よし、金は軍隊で貯めたとがあっで、町ん中から鉄くずを、どっさい拾い集めてこい!」

と、国鉄の工機部にいた次兄の安則、さらに弟の三吉とともに、庭先でのにわか鍬作りが始まった。

鋼も入らず、鍬と柄の継方も分からない素人仕事で、鍬の刃先は、化学薬品で表面処理し、あたかも鋼が入っているかのごとく見せた、堂々たるまがい物であった。

次兄安則と弟の三吉が鍬を作り、勝ちゃんが鍬を抱えて、乗り合いトラックなどに乗り、薩摩半島一円を核に、北から南への、一巡のみの営業をして売り歩く日々が続いた。

なぜかなれば、再び舞い戻って、商いでも始めようものなら、まがい物の鍬であったことで、袋叩きに合うことは、目に見えていた。

あらゆる鉄が、軍需用として召し上げられ、農村にほとんど鉄鍬が無かった時代で、勝ちゃんたちのにわか鍬は、飛ぶように売れた。

「おまんさーの鍬は、砂利畑を耕やすっと、ますます切れ味が良くないもんど!」

などと喜ぶ、農家の人も現れる始末。

何のことはない。砂利で鍬先が研がれて、ようやく、まがい物の鍬が切れ始めただけのことだった。

そうこうしているうちに、三吉の社友の従妹が、結構美人で独身である話が社友から三吉に伝わり、三吉は、たまたま社友の父宅に、蜜柑ちぎりの手伝いに来ていた、その娘に面会をした。

三吉は、すぐさま、いつも慕っている、すぐ上の兄の勝ちゃんとその娘を、引き合わす段取りをしたのだった。

その社友の従妹たる美人の娘が、終戦とともになだれ込んで来たロシア軍に、勤めていた会社を占拠され、北朝鮮(現朝鮮民主主義人民共和国)から命からがら引き上げてきていた将来の妻美智(当時20歳)だった。

日本屈指の企業家として知られる、日窒コンツェルン創始者野口遵(したがう)が、北朝鮮の興南(今の咸鏡南道咸興市)に、日本窒素肥料興南工場を設立し、戦前に大規模コンビナートを築いたが、敗戦による迫害や苦難との闘いを経て、やっと日本に引き上げてきた日本窒素肥料興南工場社員のうちの一人が、美智だったのだ。

当時、20歳の色白で、小太り気味の生娘だった美智は、日本窒素肥料興南工場を占拠した、ロシア兵の洗濯係などを担当されられ、ロシア兵の中には、美智に、いくら払ったら結婚できるかなどと、執拗なくらいに、本気の結婚相談を持ちかける、将校もいた。

日本国中の人々が、戦地から命がけで生還し、戦後の荒廃の中から、まったくの手探りでの再出発を、余儀なくされていた。

生きていることすら不思議な、勝ちゃんと美智が、生きて在ることを、改めて確かめ合うがごとく、瞬く間に交際を始めるのも、当然の成り行きであった。

その美智の長兄文男は、勝ちゃんのにわか鍬を取りまとめて、村人に勧めてくれていたが、その鍬がまがい物であることを見抜き、勝ちゃんに問い質した。

勝ちゃんは、文男の前で嵩張る札束を畳に叩きつけ、

「二度と鍬の商いは、しない!」

と、宣言した。

しかし、まがい物の鍬ではあったが、戦後の荒廃の中から、勝ちゃんの家族が、新しい生活を営んでいく、再出発の原資を手にできたことは、否めない事実だった。

この後、勝ちゃんが還暦を迎えるまで、商いの上で、筆舌に尽くしがたい辛酸も舐めなければならない、波瀾万丈の人生が待ち受けているとは、若い二人に分かるはずもなかった。DS

(萩原勝義 著 / 補筆・構成 萩原彰一)

※ 以下は本冊でお楽しみ下さい!
 
  初版刊行 2009年8月15日(土)終戦記念日

  配本開始 2009年8月12日(水)

  初版限定発売部数 300部

  定価2,625円(本体価格2500円+税125円)(弊社サイトにて、ご注文を承っております)

 


 




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