かつて27年前、弓削夫妻は、結婚と同時に豪雪の高山市に移り住んだ。その後、高山市内の小学校の校門前で「ぽころこ アートスクール」を開設。
現在も夫婦交代で、家庭菜園での野菜づくりや、新しい薪窯での作品づくりの時間を確保しながら、車で30分かけて教室に通う。
「当初は、主人は高山の家具制作会社に勤め始め、私は平塚の恩師宅での絵画教室の経験があったので、小さく一人で家庭の中で絵画教室でも始めようかなというのがきっかけでした」とぽころこアートスクールを始めるころを振り返る陽子さん。
「長男の一平が生まれたころ、育児の必要性から、どっちかが家にいるようにしようと話し合い、二人の交代制の教室運営になっていったと思います。
最初の生徒さんは3人くらいでしたね。
私一人のときは多いときで、20名くらいで精一杯でしたが、主人との二人体制になってからは、常時40名〜50名くらいの生徒さんに恵まれてきました。
中には、小学校から高校を卒業するまで、ずっと通ってくれた生徒もいました」と陽子さん。
最近は、親子で生徒さんという方や、東京の武蔵野美術大学を中心に美術学科を卒業し、デザイナーや建築家、クラフトの専門家、美術教師など、多方面で活躍している教え子も多くなってきているという。
「子供の才能などの引き出し方とは?」と問いかけると、「いかに子供たちをワクワクさせられるかだと思います。それには美的感性だけではなく、子供たちの生活全般に渡って、飽きることなく、楽しく、また、乗り越えるにきつく、達成した喜びは皆で分かち合い、他では体験できない大人の生徒さんたちとの合宿などをともに体験しながら、常に好奇心を沸き立たせることが大事だと思います」と弓削夫妻は語る。
「楽しいことを、常に新しいことを、勇気を持って、試す」という理念を持って、「27年間、同じことは決してやらないという決意のもと、新しい企画だけは二人で何百と考案してきた」と語る弓削夫妻。
「あらゆる世代、みんなが、芸術家!我々は芸術家のタマゴの殻が割れるまで、好奇心を沸き立たせ、生徒さん自身の気づきを刺激し、見守りながら、意外性を追求していきたい!」と、永住の地・飛騨高山で様々な世代からの刺激を受けながら、多くの芸術家を育てる夢と意気込みを、伯楽たちが語ってくれた。(取材:南虎)